朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』感想※ネタバレあり!!
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/11/15
- メディア: 文庫
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「想像を超える結末」に惹かれて
「ベテランミステリー読みも、こんなに驚いた!!」なんて帯にうまいこと引き寄せられて買っちゃいました。裏表紙「想像を超えた結末」なんて私の大好物です。
ついに、ずっと読んでみたかった朝井リョウさんデビューです。
『世にも奇妙な物語』
タイトルからもわかると思いますが、『世にも奇妙な物語』を朝井リョウが書いてみました! という本です。なんでも、朝井リョウさんが『世にも』好きなのだそうですよ。書店にもポップででかでかと『世にも』好きにおすすめ!! と書いてありました。
『世にも』は昔クラスでけっこう大多数が見ていた番組だった記憶が。でも私はホラーが苦手なのであまり好きではなかったです。この本も、読み始めはドキドキしながら読んでいました。
書店で買ってすぐ読み始めて、止まらず一気に読了してしまいました。それくらい疾走感があるというか、テンポが良く読める作品です。300ページちょいの中に5つの短編が入っており、ひとつひとつが短いお話なのでサクサク読めます。
やっぱり結末がすごかった
私は、全てのお話で結末を予想することはできませんでした。たぶん、予想がつく人は相当少ないんじゃないかな? 予想外の結末、とか大好きな人にはおすすめです。
一番お気に入りなのは第5話の「脇役バトルロワイアル」です。これだけでこの本買ってよかったって思えるくらい。第4話までの記憶があるうちに読んだ方がいい。
私が一気読みしたからというのもありますが、一気読みおすすめです。
以下、ネタバレ含む各話の感想です。
第1話 シェアハウさない
この結末にはびっくりです。このシェアハウスの人たち、絶対やばい奴なんだろうなとは思ってたけど。実は犯罪集団で、犯罪エキスパートの集まりとか。伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』の強盗集団みたいな感じで(まああんなに愉快な感じではなさそうだったけど)。若干かすってた感じはしなくもないですが、まさか互いを監視し、抑制しあっていたとは。ラストは怖すぎでしたね。まさに、『世にも』にある人間的なホラーの話って感じでした。
第2話 リア充裁判
正直言うと、この話はあんまり好きではありません。行き場のないやるせなさが襲いかかってくる感じ。いわゆる「非リア」に希望を持たせておいて、最後に落とす。とってもやな感じ。
これって、最後以外は語り手が知子なので、知子に感情移入してしまったんですよね。要するに、SNSとか使いまくって友達とウェイウェイしている「リア充」を軽蔑する「非リア」視点で読んでいるわけです。そこにあのラストでガツンと落とされることで、強烈なパンチを食らった気分になってしまうという。
現実に、学校のヒエラルキーとか、就活とかで勉強ばっかりの人よりコミュ力(特にSNSとかめっちゃやってる人たち)が有利になるし、実際うまくやっていけるんだろうななんてことを考えてしまいますね。すっごい暗い気分になる。
この話、インスタ映えーとか渋谷ハロウィン! とかやってる人たちを少しでも馬鹿にしたことある人、正直友達多い方じゃないしウェイウェイしたイベントはあんまり行かない人、そういう人たちは覚悟して読んだ方がいい気がする。私みたいに落ち込んじゃうから笑
第3話 立て! 金次郎
もうここまで読んでいくと、まあこの金次郎先生、ろくな目に合わないんだろうなーって思いながら読んでいたのですが、オチは予想外で面白かったです。それにしても、こんな風に親の評判とか気にしなくちゃならないなんて、教育関連のお仕事をされている方は本当に大変なのだろうなと思ってしまいました。
結局親たちの掌の上で踊らされていたということですが、この話の一部の親御さん方は先生たちを奴隷か何かだと思っているんですかね? でもまあ、子供たちは何も知らないはずなので、それだけは救いでしょうか。
第4話 13・5文字しか集中して読めな
この話も後味最悪です。いやこの息子怖すぎでしょ。こんなに頭良くて純粋すぎて・・・ってさすがにこんな子供いないわって感じが『世にも』っぽい? 確かに誤解を招くようなニュースは多いし、それに対する批判をこめた話なんだろうけど、それよりもこの誰も幸せにならない感じがもやもやした気分になります。
第5話 脇役バトルロワイアル
これは笑いました。5つの短編で、これが最後にあってよかった。
これまでの短編が正直いやーな気持ちになるものもあったので、この話でリフレッシュできました。登場人物の名前がいい。確かに第1話~第4話に出てきた脇役たち、この俳優さんがしっくりくるわ~と。個人的にはおやつおじさんがツボ。確かにいっ〇いさんっぽい笑
主人公が溝淵淳平なのも私的には最高。おそらく(いやほぼ絶対)このモデルの俳優さん、けっこう好きなんですが昔コナンの実写で、工藤新一役(小栗旬の次に)をやってたイメージが強いので、あんまり脇役イメージがなかったんですよね。でもこのお話ではにじみ出る脇役臭が強くてはまってた。もっと好きになりました。ぜひともこのお話は実写化してほしい!
ビビりにはつらかった推理小説『屋上』(※ネタバレあり!!)
今日読了した本について。
感想にネタバレありです!!!ご注意ください。
島田荘司『屋上』
推理小説ビギナーの私、島田荘司さんは『占星術殺人事件』と短編いくつかしか読んでなかったんです。
だけど、『占星術殺人事件』がめっちゃおもしろかったもので、ずっと気になってました。
あらすじ
ある銀行に屋上があります。
そこはなかなか辛い死に方をした盆栽作家と大女優のいわくつきの屋上だったりします。
そんな怖そうな屋上で、飛び降りる人が連続! いずれも亡くなってしまいます。
なんのトリックもなさそうで、自殺かな? と思われるんですけれども、みんな自殺する理由まったくなし。
もしかして祟り?? という謎を名探偵・御手洗潔が解き明かす!
感想
私、めちゃくちゃビビりで、こういう一見ホラー? みたいなのけっこう怖いんですよ。
はやみねかおる『魔女の隠れ里』を妹と一緒に読んで、妹はぐっすりなのに私だけ寝られず泣いていたことを思い出します。
そのときから現在までこのビビりは全く治らず。
なのでこの本も、あらすじ見たときからビビりまくってました。
ただ、私はビビりの中でもなぜか怖いものを見たがるビビりなので、おそるおそるページをめくります。
いやー、ひとりひとり「自分は死なない」って言いながら死んでいくのものすごい怖かったですよ。
飛び降りたときのすっごい音が建物内に聞こえる描写とかあるんですけど、想像すると心臓あたりがふわわってなります。
悲劇の死を遂げた盆栽作家と大女優の詳細が語られるんですけど、それが本当にかわいそうで(´;ω;`)
だからこそ祟りか!? って怖くてしかたない(笑)
以下ネタバレ有!!
この本にも「読者への挑戦状」がついています。
私これ大好きで、いったんページを戻して熟考するタイプなんです。
なんですけど、これはわからなかったなあ。
いや、正解したことないんですけどね(笑)
この本、ググってみると「バカミス」って出てきたんですよ。
私、バカミス大好きです。「そんなバカな!」ってくらいありえない展開、めちゃくちゃおもしろいじゃないですか。
あのプルコの看板、絶対何かあると思ってたんですけど、ええーー! んなアホな! と心の中で叫んでしまいました。
極めつけに、和田さんは近眼だったってとこ、おもしろくて思わず吹き出しちゃいました。
実際に想像してみると、そりゃそんなとこに死体があったらまあビビって落ちるわ、とも思うんですけど(-_-;)
というかそんな危ない水やりを行員にやらせるなよ、というのが一番の感想(笑)
そういえばこの本、けっこうかわいそうな人が出てくるんですよね。
その中の一人、トムクルーズ似の田辺信一郎がなんかせつなかった。
自堕落な大学生活を送った結果、会社に恵まれず、トラブルに巻き込まれ・・・
いやこの人、まあまあ自業自得だなとは思うんですけれども。
それでも泣きながら世間が意地悪だーなんて思ってるところ、私だとしてもそう思っちゃうだろうなーなんて同情したり。
私最初、信一郎が犯人で、婚約者の岩木俊子たちを金目的かなにかで殺したと思ってたんですよ。
でもそうじゃなくて(遠因なのかもしれないけども)、急に俊子を失ってさぞかしびっくりしたんだろうなと。
信一郎は本当は俊子と出会ったばっかで、たぶん好きではなかったと思う。俊子も俊子で、本当に信一郎のこと好きになったわけじゃないだろうし。
でも二人の会話とか、特に俊子の大阪弁が信一郎にうつっちゃってるとことか、すごくお似合いのカップルのように思ってしまったんですよね。
世間を意地悪!! って思ってる信一郎にとって、俊子はなかなか新鮮に映ったんじゃないかと。
話の本筋とはまったく関係ないのですが、基本おセンチな人間なので、信一郎の今後がものすごく気になってしまいました。
以上、『屋上』の感想でした。
初めてのブログ、書けたぞーー!!